マラソン|ピッチとストライド表【距離別対応】速度=ピッチ×歩幅の関係と目安早見

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ピッチ(ケイデンス)とストライド(歩幅)の掛け算=速度。この記事は、距離・レベル・身長別の「目安表」と、計測→分析→改善の手順をひと目で分かるよう整理。レース当日の調整にも直結する、今日から使える実践ガイドです。

  • 速度=ピッチ×ストライドの関係と要点
  • サブ5〜サブ3・身長別の目安表
  • 計測法・ドリル・フォーム改善

マラソンのピッチとストライドの基礎(違い・計算・用語)

ピッチ(ケイデンス)とストライド(歩幅)は、走速度を決める二大要素です。速度は「1秒間に何歩進むか(ピッチ)」と「1歩でどれだけ進むか(ストライド)」の掛け算で決まり、式で書けば〈速度[m/s]=ピッチ[steps/s]×ストライド[m]〉。

実務ではピッチは「spm(steps per minute:1分当たりの歩数)」で表示されるため、〈速度[m/s]=(ピッチ[spm]÷60)×ストライド[m]〉、〈ストライド[m]=速度[m/s]×60÷ピッチ[spm]〉と変形して使います。この記事ではランナーが現場で使いやすいように、目安レンジや計算例を丁寧に整理し、「マラソン ピッチ ストライド 表」を活用した自己最適化の手順を示します。

ピッチを無理に上げる、歩幅を力任せに広げるといった極端な発想は効率を崩しがちです。大切なのは「現状把握→小さな仮説→検証→微調整」の循環。まずは用語と計算の前提をそろえ、あなたの走りの“ものさし”を作りましょう。

ピッチ(spm)の意味と一般的な目安

ピッチは1分間あたりに着地する歩数です。多くのGPSウォッチは両足合計の歩数を示し、一般的にジョグ〜マラソンのピッチは160〜190spmの範囲に収まります。ピッチを上げる最大の利点は、着地時間の短縮と地面反力の効率化による“ブレーキ感”の軽減。ただし個体差が大きく、同一ピッチでも体格・脚のばね・スキルにより最適値は変化します。重要なのは「現在の快適ピッチ」を知り、そこから±5spmの範囲で比較検証することです。

  • ゆっくりジョグ:155〜170spm
  • マラソンペース:165〜185spm
  • 閾値走・10km:175〜190spm
  • スピード走・短距離系ドリル:185spm以上もあり得る

ストライド(歩幅)と身長比の考え方

ストライドは「1歩で進む距離」。身長や脚長、可動域、接地位置、推進の方向性に影響されます。ストライドを“広げる”という表現は誤解を生みやすく、真に目指すのは「骨盤前傾と股関節伸展で得られる後方への押し出し(水平推進)」です。単純な前方リーチはオーバーストライド(膝が伸び着地が体の前になり過ぎる形)になりやすく、接地衝撃と制動を増やします。身長比(ストライド[m]÷身長[m])は目安作りに有用で、マラソンペースでは概ね0.60〜0.85の範囲に収まることが多いです。

用語 定義 単位 備考
ピッチ 1分あたりの歩数 spm 両足合計表示が一般的
ストライド 1歩で進む距離 m 歩行学では定義差あり、ここでは「1接地ごと」
速度 単位時間当たりの距離 m/s, km/h ペース(分/km)と相互換算
上下動 重心の上下振幅 cm 過大だと効率低下

速度=ピッチ×ストライドの関係式

例:ペース5:00/kmは速度3.33m/s。ピッチ170spmなら歩数/秒は2.83、よってストライドは3.33÷2.83≒1.18m。ピッチ180spmなら3.33÷3.00=1.11m。同じ速度でもピッチとストライドの組み合わせは無数にあります。あなたにとって「呼吸・接地感・体感の楽さ」が最大化する組み合わせを探すのが実践的アプローチです。

実務ヒント:ピッチ+5spmの仮説ストライド+5cmの仮説を別々に試し、心拍・主観的運動強度(RPE)・接地音で比較。良い方を暫定採用し、さらに微調整する。

距離別に変わる最適バランスの概念

10kmやハーフではピッチ高め・ストライドやや短めで「回転優位」に寄せる方がエコノミーが良い場合が多い一方、マラソンでは疲労進行を見越し、前半は“やや高めのピッチ×自然な歩幅”、後半は上下動抑制と骨盤のリズム維持で崩れを最小化する戦略が有効です。気温・風・路面・混雑度など外的要因も見逃せません。

エリートと市民ランナーの傾向の違い

エリートは同一速度でも接地時間が短く、骨盤前傾と股関節伸展が作る“押し出し”で自然にストライドが伸びています。市民ランナーは柔軟性や筋力、骨盤のコントロールに課題が残りがちで、ピッチに頼る傾向が強い。どちらが正しいではなく、「今の自分の制約下で最も楽に速い組み合わせ」を探ることが目的です。

ピッチ×ストライド×ペースの「目安表」

ここでは、実走で役立つ「ピッチとストライドの組み合わせ早見」と「身長比の参考レンジ」を掲載します。あくまで目安であり、全員がこの通りに当てはまるわけではありません。あなたの実測値と比較しながら、最初のターゲット設定に使ってください。計算は〈ストライド=速度×60÷ピッチ〉で行い、ペース(分/km)は速度から逆算しています。

タイム別コンビネーション早見表

ペース(分/km) ピッチ160spm時のストライド 170spm 180spm 190spm
6:00 1.042m 0.979m 0.926m 0.877m
5:30 1.136m 1.069m 1.010m 0.956m
5:00 1.250m 1.176m 1.111m 1.053m
4:30 1.389m 1.308m 1.235m 1.169m
4:00 1.563m 1.469m 1.389m 1.316m
3:30 1.786m 1.678m 1.587m 1.503m
  • 例:ペース5:00、ピッチ180 → ストライド約1.11mが目安。
  • 同じペースなら、ピッチを5〜10spm上げると必要なストライドは数cm単位で縮む。
  • 上下動や接地音が減り、楽に感じる組み合わせを優先する。

身長別ストライド身長比の目安

マラソンペース帯でのストライドは、身長の約0.60〜0.85倍に収まることが多いという“実務的”な観測レンジです。以下は身長と目安幅の対照です。

身長 身長比(目安) ストライド目安幅 補足
150cm 0.60〜0.80 0.90〜1.20m ピッチ活用で楽に速度確保
160cm 0.60〜0.85 0.96〜1.36m 可動域と骨盤コントロールで安定
170cm 0.60〜0.85 1.02〜1.45m 上半身の脱力が鍵
180cm 0.60〜0.85 1.08〜1.53m リーチに頼らず接地真下へ

目安表の使い方と限界

表は“起点”。骨格配列や筋力、腱の弾性、ランニング歴、路面、シューズにより最適はズレます。最も大切なのは、表のど真ん中を狙うことではなく、あなたの実測値と体感が示す「楽に速い」帯域を見つけることです。週ごとに同条件のテスト(1km×3本など)でピッチとストライドの組み合わせを変え、平均心拍・上下動・接地時間・主観的強度を記録し、1ヶ月単位で振り返ると誤差に強い意思決定ができます。

自分の数値を測る方法と記録の仕方

正確な計測と記録は、ピッチ/ストライド最適化の土台です。GPSウォッチやスマホアプリで自動取得できる数値に加え、動画やメトロノームでの手動カウントを併用すると、精度と再現性が高まります。ここでは「最小手間で再現性の高い」手順を提示します。データは走力の通信簿。数を集めるだけでなく、同条件で比較する“実験設計”が結果を分けます。

GPSウォッチ・アプリでのピッチ/ストライド計測

  • ウォームアップ10〜15分で体をほぐし、平坦・無風に近いコースを選ぶ。
  • 同じシューズ・同じ手荷物・同じ時間帯(気温)で統一する。
  • 1km×3本(イージー・Mペース・閾値)のステップテストを行い、各本でピッチ/ストライド/心拍/上下動を取得。
  • ウォッチの自動ラップと手動ラップを使い分け、誤差をチェックする。

メトロノーム・動画での手動カウント

ピッチは「右足着地を15秒間で数えて×8」でも概算可能です。スマホのメトロノームアプリを170〜185bpmに設定し、拍に着地を合わせて回転の負荷感をチェック。動画は側方・後方から撮影し、接地位置(体の真下か)、膝の屈曲、骨盤の傾き、上下動の大きさをフレーム単位で確認します。

計測方法 長所 短所 活用ポイント
GPSウォッチ 自動で一括取得 屋内/トンネルで誤差 同条件での再現性重視
スマホアプリ 手軽・可視化が豊富 センサー精度に差 ラップ管理を丁寧に
メトロノーム ピッチ感覚を養う 実走の自由度が減る 週1回の感覚合わせに
動画解析 フォームを客観視 撮影の手間 月1回で十分な気づき

レース中の変化を時系列で追う

レースでは前半の興奮、集団のペース、補給やトイレ、向かい風や坂でピッチ/ストライドが揺れます。5kmごとのラップに加えて、ピッチ/ストライド/上下動を後日ログで時系列にして眺めると、後半失速の“兆し”がピッチ低下なのか、ストライドの硬直なのかが見えてきます。

  • 20km以降にピッチが-3〜-5spm、上下動+0.5〜1.5cmなら疲労サイン。
  • 向かい風区間でのピッチ上げ(+5spm)とストライド微減(-3〜5cm)は合理的。
  • 最後の5kmでストライドが戻るなら、補給・筋持久の改善が効く可能性。
記録テンプレ(例)
コース/気温/風 〇〇マラソン/12℃/北風2m
シューズ 〇〇モデル
5kmごと平均ピッチ 0-5km: 176 / 5-10km: 174 / …
5kmごと平均ストライド 0-5km: 1.11m / 5-10km: 1.10m / …
上下動/接地時間 7.2cm / 245ms(例)
気づき 25km以降でピッチ低下→次回は補給タイミング前倒し

どちらを伸ばす?ピッチ/ストライドの改善アプローチ

改善の基本方針は「小さく速く→大きく強く」。まずはピッチを微増して接地時間を短縮し、そのリズムを保ったまま股関節伸展と地面反力の活用でストライドを“自然に”引き延ばします。ピッチとストライドはトレードオフになりやすいですが、フォームの質(接地位置・体幹の安定・腕振り)を整えると、両者が同時に“少しずつ”向上します。

ケイデンス(ピッチ)を高めるドリルとコツ

  • 足さばきドリル:Aスキップ、ケンケン、もも上げ(10〜20m×6)。
  • メトロノーム走:通常より+5spmで5分×3本(レスト2分)。
  • ショート坂流し:勾配3〜4%で60〜80m×6、接地を真下に。
  • 接地音チェック:左右差やドスン音が小さいほどOK。

ストライドを広げる筋力・可動域トレーニング

ストライド向上は「股関節伸展」「足関節の剛性」「ハム・臀筋の連動」が要。ジムがなくても自重で十分です。

種目 目的 目安 フォーム要点
ヒップヒンジ(デッドリフト動作) 股関節伸展 12回×3 背中中立・骨盤前傾を意識
ブルガリアンスクワット 片脚支持の安定 10回×3/脚 膝が内に入らない
カーフレイズ 下腿の弾性向上 15回×3 母趾球で押す
ヒップフレクサーストレッチ 腸腰筋の柔軟 30秒×3/脚 腰反らず骨盤を立てる

ランニングエコノミーを崩さない調整法

ピッチ上げやストライド拡張は強度が上がりがち。週内での配分を整えることで疲労蓄積を防げます。

曜日 内容 ねらい
完全休養 or 30分ジョグ リカバリー
メトロノーム走(+5spm) リズムの再学習
補強(ヒンジ/ブルガリアン/カーフ) 出力の土台
Mペース走 6〜10km 実戦移行
オフ or 30分ゆるジョグ 回復
ロング走 20〜30km 持久とフォームの持続
流し 100m×5 + モビリティ 神経系の上書き

小技:ピッチ調整は±3spm刻み、ストライド調整は±3〜5cm刻みで。体感が“ほぼ同じ”に感じられる最小差で比べると、正しい判断がしやすい。

フォームと故障予防のチェックポイント

ピッチ/ストライドの最適化はフォームの質と切り離せません。特にオーバーストライド(前方リーチのしすぎ)と過大な上下動は、制動と衝撃を増やし、膝・シンスプリント・臀部のトラブルの温床になります。接地は体の真下〜わずかに前、上半身は“脱力して前へ倒れる”。骨盤と胸郭のスタック(重なり)を保つことで、推進のロスが減ります。

オーバーストライドの回避と接地位置

  • 視線は10〜15m先、顎を引き、肩の力みを抜く。
  • 肘は後ろに引く意識で、腕振りで骨盤を誘導。
  • 着地は母趾球寄りのフラット気味に、接地時間を短く。
  • 脚を前に“置く”ではなく、体の下で“回す”。

上下動・姿勢・腕振りの整え方

上下動は少なすぎても弾性が使えず、多すぎてもロス。7〜9cm前後を1つの指標に、鏡や動画で確認しましょう。骨盤は軽い前傾、みぞおちから前へ“落ちる”感覚で自然な前進を作ります。腕は肘から後ろへ、手はリラックス。呼吸は鼻口併用でリズムを安定させます。

症状/サイン 考えられる原因 対策
膝前面の痛み 前方接地・膝伸展着地 ピッチ+5spm、接地真下化、ヒンジ強化
シンスプリント 過度のヒールストライク・内旋 足部の剛性強化、前足部接地練習
臀部/ハムの張り 骨盤後傾・股関節伸展不足 ヒップヒンジと腸腰筋ストレッチ
ふくらはぎ攣り 接地時間過長・水分/電解質不足 ピッチ微増、補給計画の見直し

負荷管理とピッチ/ストライドの調整幅

故障予防は量×質×回復のバランス。週の総走行距離を+10%以内で増やし、強度走は週2回まで。ピッチの常用域は±5spm、ストライドは±5〜8cmを“日々の調整幅”と捉えると安全です。

  • 強度走の翌日は“ピッチやや高め×ストライド短め”でジョグ。
  • ロング走後はモビリティを優先、数値は気にし過ぎない。
  • 違和感が出たら、まずピッチ+5spm→ストライド自然減で様子を見る。

体格・レベル・コース別の最適化

同じペースでも、身長や脚の長さ、筋力特性、経験年数により“楽に感じる”ピッチ/ストライドは変わります。さらにコースの勾配、風向、路面状況で最適解は動きます。最後に、体格・レベル・コース条件ごとの調整指針を整理し、実戦での意思決定を高速化しましょう。

身長・性別で異なるストライド身長比

一般に背が高いほどストライドは大きくなりやすい一方、ピッチはやや低めに落ち着きやすい傾向があります。ただし女性ランナーは柔軟性や可動域で優り、同身長でも効率的なストライドを実現するケースも少なくありません。指針は「身長比レンジ内で、自分にとって楽な帯域を探す」。

タイプ 推奨起点 微調整の方向性
身長高め・脚長 170〜178spm × 身長比0.70 ピッチ-3〜+3、骨盤前傾維持でストライド自然増
身長低め・回転型 176〜184spm × 身長比0.65 ピッチは維持、股関節伸展で+3〜5cm
女性・柔軟性高 174〜182spm × 身長比0.68 接地真下化で上下動抑制、安定優先
初心者・スタミナ不足 168〜176spm × 身長比0.60 ピッチ+3spmから、呼吸が乱れない範囲で

初心者〜サブ3の目安コンビネーション

  • 完走狙い:165〜175spm × 0.60〜0.70H(H=身長)
  • サブ4:170〜180spm × 0.65〜0.75H
  • サブ3.5:172〜182spm × 0.70〜0.80H
  • サブ3:175〜185spm × 0.75〜0.85H

坂道・向かい風・トレイルでの調整

上りはピッチやや高め×ストライド短めで重心を前に保ち、下りは接地衝撃を抑えるためピッチ高め×ストライド控えめが安全です。向かい風ではピッチ+5spmを合図に屈みすぎず上体をやや前傾。トレイルは路面不整に合わせ、視線先行と短い接地でリズムを刻むのが基本です。

状況 推奨調整 理由
上り +3〜5spm、-3〜5cm 重心落ち込みと失速の抑制
下り +5spm、-5〜8cm 制動・衝撃の低減
向かい風 +5spm、-3〜5cm 前面投影の最適化と接地短縮
追い風 ±0〜-3spm、+3〜5cm 推進を受けて自然増
ぬかるみ +3spm、-3〜5cm 滑りリスク低減

実戦メモ:マラソン30km以降はピッチ維持が命綱。フォームが崩れてもピッチだけは落とさない意識で、ストライドは“自然な範囲”に任せると失速幅が小さい。

まとめ

速く・楽に走る鍵は、無理に歩幅を広げるよりも、適正ピッチと安全なストライドの両立です。まず自分の現状値を把握し、目安表で狙いどころを定め、短時間ドリルでケイデンスと可動域を整えましょう。過度なオーバーストライドは故障やブレーキの元。天候やコースで微調整し、レースでは「少し高めのピッチ×自然な歩幅」を軸に安定化させるのが近道です。

  • 現状のピッチ/ストライドを計測して基準化
  • 目安表で距離・レベル別にターゲット設定
  • 週2〜3回のドリルで段階的に最適化