全国都道府県対抗男子駅伝は高校生区間が勝負|順位変動を招く魔の1区4区5区!

marathon (26) 駅伝

2026年1月18日、冬の広島を舞台に開催された「天皇盃 第31回全国都道府県対抗男子駅伝競走大会」。世代を超えたたすきリレーが魅力のこの大会において、レースの行方を決定づけたのは、間違いなく「高校生区間」での激しい攻防でした。

中学生、高校生、そして大学生・社会人がチームを組む本大会ですが、実は最も順位変動が起きやすく、チームの最終順位に直結するのは、全体の距離の約3割を占める高校生区間(1区・4区・5区)であると言われています。

なぜ、高校生区間でこれほどまでにドラマが生まれるのでしょうか。2026年大会の最新結果とデータを踏まえながら、そのメカニズムを紐解いていきましょう。

  • 1区(7.0km):スタートダッシュと位置取りの駆け引き
  • 4区(5.0km):スピードランナーによる「ごぼう抜き」多発区間
  • 5区(8.5km):高校生最長、タフさが求められるエース区間

全国都道府県対抗男子駅伝の高校生区間で順位変動が多発する3つの要因

全国都道府県対抗男子駅伝、通称「ひろしま男子駅伝」において、高校生区間は単なる「つなぎ」ではありません。ここで順位を大きく上げるチームもあれば、まさかのブレーキで入賞圏外へと弾き出されるチームもあります。

特に2026年大会では、1区から区間新記録が飛び出すなど、例年以上に高校生のパフォーマンスがレース全体を支配しました。なぜ、この区間で順位変動が頻発するのか、その構造的な理由を3つの視点から解説します。

都道府県ごとの選手層の厚さと実力差の表れ

順位変動が起きる最大の要因は、各都道府県における高校生ランナーの選手層の厚さにあります。長野県(佐久長聖)、岡山県(倉敷)、広島県(世羅)のように、全国高校駅伝(都大路)の常連校を抱える県は、補欠選手まで全国トップレベルの実力者を揃えることができます。

一方で、強化が進んでいない県や、その年の有力選手が怪我で欠場した場合、代わりの選手との走力差が顕著に出やすいのが高校生カテゴリーの特徴です。社会人や大学生トップランナーは一定のタイムで走る計算が立ちますが、高校生は成長段階にあるため、当日の調子やメンタルによって1分以上のタイム差がつくことも珍しくありません。

12月末の「都大路」からのコンディション調整の難しさ

多くの高校生ランナーにとって、最大の目標は12月下旬に行われる全国高校駅伝(都大路)です。この大舞台にピークを合わせているため、そこから約3週間後の都道府県対抗男子駅伝に向けて、再びコンディションを最高潮に持っていくことは至難の業と言えます。

都大路で燃え尽きてしまった選手や、疲労が抜けきらない選手がいる一方で、都大路に出場できなかった悔しさをこの広島にぶつけてくる選手もいます。この「調整の成否」と「モチベーションの差」が、予想外の区間順位の変動を生み出す要因となっています。

中学生区間からの流れと「もらい」の影響

高校生区間である4区と5区は、それぞれ中学生が走る区間(2区・6区)と密接に関係しています。特に4区は、社会人・大学生が走る3区からたすきを受け、中学生につなぐ重要なポジションです。

前走者が良い順位で来てくれれば、高校生もリラックスして流れに乗れますが、悪い順位でたすきを受けると「自分が挽回しなければ」という焦りが生まれ、オーバーペースによる失速を招くことがあります。経験の浅い高校生にとって、単独走になるか集団走になるかという「シチュエーション運」も、タイムを大きく左右する要素なのです。

スタートダッシュで流れを作る!1区(7.0km)の重要性と攻略法

平和記念公園前をスタートする1区(7.0km)は、全47チームが一斉にスタートするため、転倒などのトラブルを避けつつ、いかに好位置をキープできるかが勝負の分かれ目となります。

2026年大会では、この1区でいきなり歴史が動きました。宮城県代表の鈴木大翔選手(仙台育英高)が19分06秒という驚異的な区間新記録を叩き出し、レースの流れを一気に引き寄せたのです。

大集団での位置取りと激しい駆け引き

1区の最大の特徴は、スタート直後の大集団です。7kmという距離は、トップ高校生にとってはスプリントに近いスピードレースとなります。そのため、少しでも気を抜くと集団の後方に埋もれてしまい、前に出るタイミングを失ってしまいます。

有力校のエースたちは、常に集団の前方20番手以内をキープし、無駄な体力を使わずにスパートの機会を伺います。鈴木選手のような圧倒的な走力を持つランナーがいる場合、早い段階で集団が縦長になり、ついていけない選手が次々と脱落していく「サバイバルレース」の様相を呈します。

平和記念公園前のスパート合戦が生むタイム差

コースは比較的平坦ですが、ラスト1km付近からのペースアップは壮絶です。特に中継所手前の直線では、1秒でも早く中学生(2区)にたすきを渡そうと、高校生たちが死力を尽くしてスパートをかけます。

ここでトップと30秒以上の差がつくと、距離の短い2区(3km)の中学生区間で挽回するのは極めて困難になります。つまり、1区での出遅れは、前半戦の順位を決定づける致命傷になりかねないのです。上位校はここで必ず「区間一桁順位」で滑り込み、主導権を握る戦略をとります。

出遅れが許されない各県エース級の投入

かつては「様子見」の区間とも言われましたが、近年は「1区に絶対的エースを置く」戦術が主流になっています。2026年大会の宮城県のように、チームで最も信頼できる高校生を1区に配置し、先行逃げ切りを図るケースが増えています。

この傾向により、1区のハイレベル化が加速しています。区間賞争いだけでなく、中位グループの争いも熾烈を極め、ここでの順位変動がその後のチームの勢い(モメンタム)を完全に支配することになります。

スピードスターが集結する4区(5.0km)は順位アップの好機

宮島口ロータリー付近からスタートし、JR阿品駅南を目指す4区は、高校生区間の中で最も短い5.0kmという距離設定です。しかし、この短さが逆にレースを激しく、スピーディーなものにしています。

2026年大会では、兵庫県代表の新妻昂己選手(西脇工高)が14分05秒という好タイムで区間賞を獲得しました。この記録からも分かる通り、4区は5000mを13分台~14分00秒台で走るスピードランナーたちがその真価を発揮する舞台です。

最短区間ならではの高速レース展開

5kmという距離は、スタミナに多少不安がある選手でも、スピードで押し切れる距離です。そのため、各チームはここに「スピードはあるが長い距離は苦手」な選手や、「トラック競技が得意な1500mランナー」を配置する傾向があります。

スタート直後からハイペースで突っ込む選手が多く、順位の入れ替わりが非常に激しいのが特徴です。前のランナーが見えている場合、5kmという距離は「追いつける」という心理的なポジティブさを生みやすく、攻撃的な走りを誘発します。

1500m・3000m障害の選手が輝く舞台

駅伝といえば10km前後の距離を走るイメージが強いですが、4区は中距離適性のある選手が輝きます。特に、ラスト1kmの切れ味鋭いスパートは、長距離タイプの選手にはない魅力があります。

また、コースには細かなアップダウンや折り返し地点が含まれる場合もあり、リズムの変化に対応できる器用さも求められます。トラックシーズンで活躍した選手が、ロードの駅伝でそのスピードをいかんなく発揮し、チーム順位を5つ、6つと押し上げる「ごぼう抜き」が見られるのも、この4区の醍醐味です。

つなぎ区間ではなく「攻め」の区間としての役割

かつて4区は、エースを1区や5区に配置した後の「3番手選手」が走る区間と見なされがちでした。しかし、近年の高速駅伝化に伴い、4区で中だるみすることは許されなくなっています。

特に優勝を狙うチームは、3区の社会人・大学生で作った貯金を減らさない、あるいはさらに広げるために、あえて準エース級を4区に投入します。2026年の兵庫県のように、4区で区間賞を取るような走りができれば、続く最長区間の5区に向けて最高の流れを作ることができるのです。

最長距離のタフなコース!5区(8.5km)が後半戦の明暗を分ける

JR阿品駅南から広島工大高前まで、高校生区間最長の8.5kmを走るのが5区です。この区間は、アンカー(7区・13km)につなぐ前段階として、チームの最終的な順位を大きく左右する「勝負の区間」です。

2026年大会で区間賞を獲得した栗村凌選手(福島・学法石川高)の24分07秒という記録は、この区間の厳しさと、それを攻略した選手の実力を物語っています。福島県が優勝争いに絡めたのは、この5区での快走があったからこそです。

一般区間に匹敵する距離への適応力

8.5kmという距離は、3区の社会人・大学生区間と同じ距離です。つまり、5区を走る高校生には、大人と変わらないスタミナと精神力が求められます。

後半にかけて疲労が蓄積する中で、どれだけペースを落とさずに粘れるかがポイントになります。特にラスト3kmは、スタミナ切れを起こした選手が急激にペースダウンし、後続に次々と抜かれるシーンが散見されます。ここで大崩れしない「強さ」を持った選手がいるチームだけが、入賞圏内に留まることができるのです。

アンカーにつなぐための貯金作り

5区の役割は、次の6区(中学生・3km)を挟んで控えるアンカー(7区)に、いかに良い位置でたすきを渡すかという点に尽きます。7区には各県の誇るトップランナーや箱根駅伝のスター選手が待ち構えていますが、彼らであっても数分の差を逆転するのは容易ではありません。

したがって、5区の高校生は、アンカーが無理なく逆転できる射程圏内にチームを押し上げる義務があります。「自分で勝負を決める」という気概と、「アンカーを楽にさせてやる」という献身性が同居する、精神的にもタフな区間と言えるでしょう。

順位変動が最も起きやすい「ごぼう抜き」の名所

距離が長い分、実力差がタイム差として如実に表れるのが5区です。区間賞レベルの選手と、調子の悪い選手とでは、この8.5kmだけで2分以上の差がつくこともあります。

実力のある選手が後方からスタートした場合、10人、15人と次々に前のランナーを抜き去る「ごぼう抜き」が頻発します。観客にとっては最も興奮するシーンの一つですが、抜かれる側のチームにとっては悪夢のような時間です。この区間での順位変動グラフは、他の区間と比べても乱高下が激しく、駅伝ファンにとっては目が離せないポイントとなっています。

2026年大会の高校生区間で注目すべき観戦ポイントとデータ

2026年のひろしま男子駅伝は、高校生たちのパフォーマンスが例年以上にクローズアップされた大会となりました。特に1区での区間新記録や、各区間での激しい順位変動は、今後の高校生ランナーのレベルアップを示唆しています。

ここまでの分析を踏まえ、今年の結果から見えてきた「勝てるチーム」の条件と、今後の観戦をより面白くするための注目ポイントを整理します。

都大路(高校駅伝)活躍選手のエントリー状況と結果

2025年末の都大路で活躍した選手たちが、そのまま都道府県対抗でも好走するケースが目立ちました。特に優勝校や上位入賞校のメンバーが各県の主力として配置された場合、その安定感は抜群です。

しかし、中には都大路での疲労から回復できず、本来の走りができなかった選手もいます。来年以降の大会を見る際は、都大路の結果を鵜呑みにせず、「都大路から約3週間、どのように調整してきたか」という前評判や直前の記録会のタイムをチェックすることが、順位予想の精度を高めるコツとなります。

過去大会の区間賞タイムと記録の傾向

駅伝の高速化は止まりません。1区の19分台前半、4区の14分00秒前後、5区の24分台前半というタイムは、かつては超高校級と言われた記録ですが、今では区間賞争いの「最低ライン」になりつつあります。

特に厚底シューズの普及以降、ロードでの記録水準は飛躍的に向上しています。過去のデータと比較する際は、単なる順位だけでなく、区間タイムがどれだけ短縮されているかにも注目してください。これにより、その年の高校生全体のレベルの高さを把握することができます。

ふるさと選手との連携による相乗効果

高校生が好走するチームには、必ずと言っていいほど「良い雰囲気」があります。それは、憧れの先輩である「ふるさと選手(社会人・大学生)」との交流によって生まれます。

例えば、同じ高校出身の先輩が同じチームにいる場合、高校生は「先輩に恥じない走りをしたい」と奮起します。2026年大会でも、福島県や長野県のように、世代を超えた絆が強いチームは、苦しい場面でも粘り強い走りを見せました。データには表れないこの「チーム力」こそが、予測不能な順位変動を生み出す駅伝の醍醐味なのかもしれません。

まとめ:高校生の激走を見逃すな!

全国都道府県対抗男子駅伝における高校生区間(1区・4区・5区)は、単なるつなぎの区間ではなく、レースの勝敗を左右する最もスリリングな戦場です。1区でのスタートダッシュ、4区でのスピード勝負、そして5区でのタフな粘り。これらが複雑に絡み合い、台本のないドラマを生み出します。

2026年大会の結果が示したように、高校生ランナーの一瞬の輝きや失敗が、チーム全体の運命を決定づけます。今後、駅伝を観戦する際は、ぜひ彼ら高校生の表情や走りに注目してください。そこには、順位変動の数字だけでは語り尽くせない、青春のすべてを懸けた熱い戦いがあるはずです。

来年の大会に向けて、今から各都道府県の高校生ランナーの動向をチェックし、次のヒーローが誰になるのか予想してみてはいかがでしょうか。