- 周回特性を生かしたラップ&補給テンプレート
- 風・勾配・路面を織り込むペース戦略
- アクセス・受付・整列の動線最短化
- エントリー規約と持ち物チェックの要点
- 4週間仕上げ練とテーパリングの具体例
大会の全体像と活用メリット
西東京30kは、フル本命の8〜10週前、または3〜5週前の確認走として機能しやすい周回型30kmイベントです。周回は「同条件での繰り返し」によって課題の特定が容易で、補給やペースの最適化を素早く回せます。
参加者の目的は「フルの再現」「負荷の可視化」「集団走でのリズム習得」に収斂し、ペーサー列の活用で単独走のブレを抑えられます。開催時期は気温変動が大きく、衣類戦略が結果へ直結します。
コースはフラット寄りでも微細なアップダウンや風の通り道があり、周回の向きで影響が変わるため、周回ごとの相対比較で「楽・普通・きつい」の主観とラップ差を一致させる作業が鍵です。制限時間がある場合は安全策として、最初の10kmをマラソンペース+5〜10秒/kmで入り、身体が温まる第2周で最適ペースへ寄せ、第3周以降は補給ドリルと接地リズムで粘る構成が定番です。
大会の位置づけ(フル本命の精度向上に役立つ30km走)
30km走は「脂質代謝と筋損傷の耐性」を実戦強度で確認する装置です。練習の30km単走と違い、イベントの集団走は気流・ペースの均一化・補給機会の確保という利点があり、同強度でも体感的な余裕度が高まることが多いです。
ここで得るべきはタイムではなく「再現性」。5km毎のラップ差±10秒以内、心拍ドリフトの抑制、主観的運動強度(RPE)とピッチの一致など、管理可能な指標を持ち帰ることがゴールです。
開催時期と気象の傾向・服装指針
気温5〜15℃帯では、序盤の冷え対策と中盤以降の発汗管理の両立が重要です。使い捨てアウター、腕まくり可能なレイヤー、指先の保温、汗冷えを防ぐインナーが有効。風が強い日は向かい風区間でピッチ先行、追い風でストライドを自然拡張。直射日光が強い日はキャップ・サングラスで眼精疲労と体感温度を下げます。
コースと路面の特徴・周回運用の利点
周回は「学習の最短距離」です。1周目は偵察、2周目で修正、3周目で検証、4周目以降は再現。この繰り返しでフォームと補給の最適点に収束させます。路面はアスファルト主体でもコーナーや細かな傾斜があり、接地時間・左右差がラップへ影響します。
参加者層とペーサーの使い方
ペーサー列は「微差の積み上げ」を助ける道具。付かず離れず2〜5mを維持し、給水前後の加減速を抑えます。集団の密度が高いときは肩回りの可動域が制限されるため、腕振りはややコンパクトに。
制限時間と安全上の注意
寒暖差・風・補給失敗が重なると終盤の失速リスクが上がります。異変を感じたらRPE基準に切り替え、胸痛・眩暈・悪寒などがあれば必ず中止・スタッフへ申告を。
指標 | 目安 | 実務ヒント |
---|---|---|
5kmラップ差 | ±10秒以内 | 向風区間はケイデンス重視 |
RPE推移 | 5→6→7 | 後半は呼吸より脚の疲労で判断 |
補給回数 | 3〜5回 | 10/15/20/25kmで固定 |
心拍ドリフト | <5% | 前半の入りを抑える |
補水量 | 300–600ml | 気温10℃毎に+150ml |
- 1周目は偵察、2周目で修正、3周目で検証
- 給水所30m手前で呼吸を整える
- 向風は集団背後で省エネ、単独時はピッチ上げ
- 10kmで上半身スキャン、肩甲骨を解放
- 25kmからフォーム合図(接地真下・腕振り小)
- レース用と同配合の補給を使用
- 体感が楽でも前半は抑制
- 凍える日は手袋・耳の保温
- シューズは本命と同系統
- 終了後30分以内の糖+タンパク補給
周回=学習の反復を意識し、微差の修正を積み重ねれば、終盤の大失速を回避できます。
コース攻略とペース配分の基礎
フラット寄りの周回でも、微勾配と風の組み合わせで体感負荷は揺れます。ペース配分は「区間強度一定」が原則。勾配区間は速度よりピッチで負荷を均一化し、下りは骨盤前傾と接地時間短縮でブレーキを回避。風向は周回で周期的に変わるため、向風を「守り」、追風を「淡々」と処理します。コーナーは外周の遠回りを避け、視線先行で最短動線を描きます。
高低差プロファイルと上り下りの刻み方
上りは母指球の下で接地、腰の位置を落とさず脚の引き上げで刻む。下りは骨盤から前へ、着地は体の真下。ブレーキ姿勢(背中が落ちる・踵接地先行)は失速の温床です。
風向と露出区間への対処
向風:肘角度を狭め前傾を微調整、ケイデンス+2〜4。追風:フォームを崩さず呼吸を整える時間に。横風:肩を開きすぎない。
路面・コーナー特性とラップ管理
カーブ連続区間は内外差で距離誤差が生まれます。最短動線を維持し、ラップの乱れを抑えます。
区間 | 走り方 | ヒント |
---|---|---|
微上り | ピッチ先行 | 呼吸を乱さない |
微下り | 骨盤前傾 | 接地時間短縮 |
直線追風 | 力感抑制 | 肩脱力 |
直線向風 | 集団ドラフティング | 2〜5m後方 |
コーナー | 視線先行 | 最短ライン |
- 周回ごとに風の強弱をメモ
- 上りはピッチ、下りは接地短縮で一定化
- 追風で補給とフォーム確認
- 直線は真っ直ぐ、コーナーは最短
- 周回ラップ誤差±15秒以内を目標
- 気温上昇時は給水間隔を短縮
- コーナー前で集団ポジション調整
- 風の音で向風の前兆を掴む
- 下りで跳ねない接地を意識
- 周回ごとに主観RPEを記録
ペースの絶対値よりも、区間強度の一定化が目的です。微勾配はピッチで解決し、無理な帳尻合わせは禁物です。
装備・補給・シューズ選び
装備は寒暖差・風・路面・距離に最適化します。シューズは本命フルと同系統のカーボンまたは軽量トレーナーが無難。ソックスは摩擦低減と汗処理を重視します。補給は糖(グルコース・フルクトース併用)+電解質+状況に応じてカフェイン。携行かコース給水かは密度で選択し、10/15/20/25kmで固定化すればオペレーションが安定します。
シューズとソックスの最適解
高反発厚底は脚を守り、周回での疲労蓄積を軽減。アウトソールのグリップとコーナーの安定感も評価基準に。
補給戦略(カフェイン・糖・電解質)
30kmでは炭水化物摂取率30–60g/hが目安。カフェインは体重×3mgを分割し、15〜20kmでピークを合わせると粘りに効きます。発汗が多い日はナトリウムの補給を増やします。
ウェア・小物・携行ボトルの最適化
薄手の手袋・イヤーウォーマー・アームカバーで微調整。ジェルは左右対称に配置しバランスを崩さないこと。
カテゴリ | 基準 | 実務ヒント |
---|---|---|
シューズ | 本命と同系 | 最後まで安定 |
ソックス | 吸汗・摩擦低減 | 踵ずれ防止 |
ジェル | 30–60g/h | 10/15/20/25km |
電解質 | 汗量に応じ可変 | ボトルで追加 |
カフェイン | 体重×3mg | 分割投与 |
- 前週に装備一式の通しリハ
- ジェル位置と開封手順を固定
- 気温別ウェアを2案用意
- 靴紐テンションを周回で再確認
- 終了後の回復食を事前手配
- 腰回り左右対称の携行配置
- 手がかじかむ日は事前に開封口を作る
- 給水直後の呼吸乱れに注意
- 塩タブは暑い日だけでなく冷え風でも有効
- ゴミは必ず指定位置へ
装備の一貫性が再現性を生みます。補給は位置と回数を固定し、新製品の試行は当日NGです。
アクセス・受付・当日の動線
当日の迷いは体力と集中を奪います。アクセス手段と所要時間、受付の位置、荷物預かり、トイレ動線、整列ブロック、給水所位置を事前に地図で確認。スタート60分前には会場着、40分前に受付・荷物、30分前にジョグ、20分前にドリル、10分前に整列という時間割で、ウォームアップとトイレ行列の不確実性を吸収します。フィニッシュ後は保温→糖+タンパク→歩行の順で回復を加速します。
アクセスと入場動線の基本設計
乗換回数・混雑時間帯・最寄りからの徒歩動線を事前シミュレーション。雨天時は傘よりレインポンチョが両手自由で有利です。
受付から整列までの時間割
ゼッケン装着・チップ確認・荷物預けをルーチン化。整列はペースの近いブロックで、スタート後の蛇行を減らします。
フィニッシュ後の回復と動線のコツ
冷える前に保温、炭水化物+タンパク質(3:1)、軽い歩行で代謝産物を流し、着替えは汗冷え前に。
項目 | 目安 | ヒント |
---|---|---|
会場着 | 60分前 | 遅延余裕を確保 |
受付・荷物 | 40分前 | 列の短い時間に |
アップ | 30〜15分前 | ジョグ+ドリル |
整列 | 10分前 | ブロック順守 |
回復 | 30分以内 | 糖+タンパク |
- 最寄り駅の混雑時間を調査
- 会場導線を地図に書き出す
- トイレの予備ルートを設定
- 整列ブロックの基準を確認
- 終了後の集合場所を決める
- 小銭・IC・モバイル決済を二重化
- 雨天はポンチョ+シューズカバー
- ホッカイロで指先保温
- 補給ゴミは携行袋へ
- 帰路の飲食店も事前予約
動線は「時間割の固定化」が勝ち筋。不確実性は前倒しで吸収し、直前のドタバタを無くしましょう。
エントリー・準備・持ち物チェック
人気イベントはエントリー開始直後に動くのが鉄則。キャンセル規約・名義変更・雨天決行の扱いを事前に把握し、日程が本命練習計画と矛盾しないかを確認します。準備は「持ち物の定型化」で9割が解決します。ジェルや塩タブの数、ピンの予備、テーピング、当日の補食、保温具、レイン対策をリスト化し、前夜に袋分け。故障予防はふくらはぎ・臀筋・ハムのプリケアを重視し、痛みがある場合は無理にスピードを上げず出走判断の基準を明文化しておきます。
エントリー戦略とキャンセル規約の理解
事前にアカウント・決済手段を用意し、入力を自動補完。開始直後の数分が勝負です。トラブル時の代替回も視野に。
必携品と当日チェックリスト
装備は「無いと困る」順。天候別の差し替えも準備し、朝の気温で最終決定。モバイルバッテリーと身分証も忘れずに。
故障予防とセルフケア
ウォームアップで臀筋群を活性化し、腸腰筋の伸展と足首の可動域を確保。違和感は当日無理をしない勇気が重要です。
カテゴリ | 必須度 | ヒント |
---|---|---|
身分証・決済 | 高 | トラブル対応 |
ゼッケン・ピン | 高 | 予備も携行 |
ジェル・塩 | 高 | 数と位置を固定 |
保温・雨具 | 中 | 天候で選択 |
テーピング | 中 | 使用部位を事前試行 |
- エントリー開始時刻のリマインド設定
- 決済手段の事前テスト
- 装備を袋分けで可視化
- 天候別プランA/Bを用意
- 出走中止の基準を紙で持参
- 爪切りは前々日に
- 睡眠は2日前から確保
- 朝食は慣れたメニュー
- 整列前にトイレ最終確認
- GPSの自動一時停止はオフ
定型化された準備が当日の集中力を守ります。規約の把握と無理をしない判断をセットにしましょう。
4週間仕上げ練習計画
仕上げ期は「練習の質>量」。ポイント練でマラソンペース(MP)を身体に刻みつつ、テーパリングで疲労を抜きます。30kmは本命の再現練。直前1週は刺激のみで蓄え、2週前はMP走と閾値走のミックスで代謝とフォームを研ぎ澄まします。E(イージー)走は会話可能ペースで心拍を落とし、睡眠と栄養の管理を最優先にします。
4週間カレンダー(ピークとテーパリング)
3週前:ボリューム最大。2週前:質最大。1週前:量を落とし刺激維持。週内で強弱の波を作り回復をはさみます。
ポイント練詳細(閾値・マラソンペース・E走)
閾値(LT)で脚と呼吸の同調を作り、MPで省エネ走法を固めます。E走で循環器系の回復と可動域を維持します。
体調・疲労と睡眠の管理
睡眠の固定化が最大のドーピング。就寝・起床時刻を揃え、起床時心拍・主観疲労で練習強度を微調整します。
週 | ポイント | 目安 |
---|---|---|
3週前 | LT20分×2 | 余裕残し |
2週前 | MP12〜16km | フォーム重視 |
1週前 | 5km刺激 | 脚に記憶 |
直前 | ジョグ+流し | 疲労抜き |
補助 | 可動域/補強 | 週2〜3回 |
- 週ごとに目的を1つに絞る
- 睡眠7時間以上を死守
- 起床時心拍で強度を調整
- E走は会話可能ペースを厳守
- 可動域ドリルをルーチン化
- 糖質はポイント前日に多め
- 鉄・亜鉛・ビタミンDも意識
- アルコールはポイント翌日
- 体重は朝トイレ後で固定測定
- ストレッチは風呂後が効率的
質の高い少量と十分な睡眠が仕上げの核心です。無理な詰め込みは逆効果。
まとめ
西東京30kを最大限に活かす鍵は、周回特性を学習装置として捉えることです。1周ごとにフォーム・補給・風対策を微修正し、5kmラップ差を±10秒以内へ収束させれば、フル本命の再現性が一気に上がります。装備は本命と同系統で統一し、補給は位置と回数を固定化。
アクセスから受付・整列までの時間割を前倒しで確定し、当日の判断コストを削減します。エントリー規約の理解と持ち物の定型化で抜け漏れをゼロにし、4週間の仕上げ期は「質>量」と「睡眠の固定化」で疲労を抜きながら走力を引き上げましょう。周回=反復の強みを信じ、微差の修正を積み上げれば、終盤の失速は防げます。次のフルに繋がる価値ある30kmにしてください。