- 高低差の要点とペース配分の考え方
- 関門時刻と完走率を上げる計画
- 補給・装備・当日の動線チェック
コース特徴と高低差の読み解き
「ゆこっくマラソン」を安全かつ速く走るための第一歩は、コースの“地形情報”を戦略に翻訳することです。公式マップや高低図を入手したら、登りと下り、フラットの配列、カーブや風の通り道、舗装の種類と路面状況、そして補給地点の位置関係を一枚のストーリーとして把握します。全体像を掴めば、ペースの波を最小化して脚のダメージを減らし、関門の通過確率を引き上げられます。ここでは高低差の読み解き方と、区間設計の考え方を具体化します。
高低図のポイント3つ
- ピークの位置と長さ:登坂が何km続くか、獲得標高はどの程度か。ピーク後に急勾配の下りが続くなら、登りで心拍を上げすぎない。
- リズム回復帯:風向きが変わる堤防や市街のフラット帯は「心拍を整える区間」。ここでフォームを再点検し燃費を戻す。
- 終盤の微登り:35km以降の微妙な上りは脚に堪える。ここを想定したギア選びと補給計画が失速回避の鍵。
区間分割の基本――登りで削らず、下りで稼がない
理想は「登り=タイムを失わない」「下り=脚を壊さない」。下り加速で貯金を狙うと大腿四頭筋の微細損傷が増え、35km以降にツケを払う形になります。代わりに、フラット帯で静かに秒を積むのが長距離の定石。高低差のある大会ほど、区間指標(ペース)より主観的運動強度(RPE)基準でコントロールするほうが成績が安定します。
高低差を戦略に落とすテンプレ表
区間例 | 距離 | 勾配の印象 | 意識すること | ラップ目安 |
---|---|---|---|---|
序盤フラット | 0–10km | 一定 | 心拍上げ過ぎ禁止、群衆に飲まれない | 目標Mペース+5〜10秒 |
中盤登坂 | 10–20km | じわ上り | 歩幅を詰めケイデンス維持、腸腰筋を使う | 心拍一定(ペースは落ちてOK) |
中盤下り | 20–30km | やや下り | 接地時間短縮、ブレーキ筋に負担をかけない | Mペース±0 |
終盤勝負 | 30–42km | 微アップダウン | 腕振り強調でピッチ維持、補給間隔短縮 | Mペース+5秒→最後3kmでビルド |
風と路面の影響を織り込む
向かい風は空気抵抗の二乗で効いてきます。単独走を避け、集団の背後でドラフティング(違反にならない範囲の距離感で)の工夫を。路面が粗い区間は接地衝撃が強く、厚底でもふくらはぎに来やすい。
登りでの無理な腕振り加速より、上体角度と骨盤の前傾を微調整して重心を前に運ぶのがコスパ最強。
- 高低図にピークと緩衝帯をマークする
- フラット帯で“取り戻す”秒数を決める
- 登坂は心拍固定、下りはピッチ固定と覚える
ペース配分と関門逆算
完走とベストの分水嶺は「関門逆算」。各関門の締切時刻から必要平均ペースを算出し、高低差による遅速を上乗せした区間バジェットを作ります。序盤での“貯金”は終盤の“借金”に化けがち。よって、前半は心拍基準・後半はペース基準にシフトする二段構えが堅実です。
ゴールタイム別・平均ペース早見表
目標 | 平均ペース | 前半 | 後半 | 備考 |
---|---|---|---|---|
サブ4 | 5:41/km | 5:45–5:55 | 5:35–5:45 | 登坂多→前半さらに+5秒 |
3時間30分 | 4:58/km | 5:02–5:08 | 4:52–4:58 | 終盤微上り→30–37kmは心拍管理 |
3時間15分 | 4:37/km | 4:40–4:45 | 4:32–4:37 | 下りで稼がない、フラットで積む |
関門逆算の3ステップ
- Step1:各関門の締切からマージン5分を確保した通過時刻を設定
- Step2:登り区間の許容遅れ(+10〜20秒/km)とフラットの回収(−5〜10秒/km)を配分
- Step3:ジェル摂取やエイド滞在時間(各20〜40秒)もバジェット化
RPE×心拍×ピッチで暴走を防ぐ
スタート直後はアドレナリンで主観強度が鈍りがち。「会話が可能=適正」を合図に、5kmまでは時計を見すぎない。上りは心拍上限−3〜5bpmで抑え、下りはピッチ維持(±3spm)で脚破壊を回避。35km以降は腕振り>ストライドの比重でフォームを壊さず粘るのがセオリーです。失速は“脚が止まる”より先に“補給が切れる”ことで発生するため、ペース表と同じ重要度で補給表を用意しましょう。
「前半に5分の貯金」より「終盤に失わない設計」。後半ビルドの快感は、前半の自制から生まれる。
- 関門ごとのマージン5分を死守
- 登りは心拍固定・下りはピッチ固定
- 補給とエイド滞在も“時間コスト”として計上
12週間トレーニング計画
完走率と再現性を高めるため、12週間の周期(ベース→ビルド→ピーク→テーパー)で設計します。仕事や家庭の都合で乱れやすいのは“質”より“量”。ゆえに最低限死守する3本柱(ロング走・閾値走・E走)だけは週内のどこかで実施し、他は可変でOKというルールを先に決めます。
期分けの全体像
期 | 週 | 主目的 | 週走行距離目安 | 鍵練習 |
---|---|---|---|---|
ベース | 1–4 | 有酸素土台・フォーム | 40–70km | E走60–90分、坂ドリル、補強 |
ビルド | 5–8 | LT向上・筋腱適応 | 60–90km | 閾値走20–30分、M走15–24km |
ピーク | 9–10 | 特異性・耐疲労 | 70–100km | 30–35kmロング、分割M走 |
テーパー | 11–12 | 疲労抜き・鋭敏化 | 40–60km | M−10〜15秒/km × 5–8km |
週間テンプレ(例)
- 月:オフ or 補強(股関節・中臀筋・腹圧)20分
- 火:E走45–60分+流し×6
- 水:閾値走20分(または1km×4〜5/R90秒)
- 木:ジョグ40分+坂ドリル(前傾・腕振り・接地)
- 金:オフ or ジョグ30分
- 土:M走15–24km(ビルド期)、ピークは分割M走(12km+12km)
- 日:ロング走120–150分(低強度一定)
登り下り対策のドリル
登坂は歩幅を詰め、足関節の背屈を確保。階段スキップやメトロノーム180spmでピッチ意識を高めます。下りは前腿でブレーキをかけないよう、上体をわずかに前傾し、接地は身体真下。補強は「カーフレイズ(片脚)」「ブルガリアンスクワット」「プランク+デッドバグ」。週3回、各15分でも効果は高いです。
練習は“積み上げ方”が9割。1回の神練習より、落とさない週間設計。
- 最低限の3本柱(ロング・閾値・E走)を死守
- 坂ドリルで登りの経済性を高める
- ピークは特異性(M走・分割ロング)に寄せる
補給・水分・エイドの使い方
失速の最大要因はグリコーゲン枯渇と脱水です。炭水化物60–90g/時と水分400–800ml/時を目安に、ナトリウム300–600mg/時を同時に確保。胃腸耐性は練習でしか作れません。大会2〜3週前から本番同等のジェル・ドリンクで「摂取→揺れ→消化」の動作を身体に学習させます。
摂取量の目安
項目 | 推奨レンジ | 実践のコツ |
---|---|---|
炭水化物 | 60–90g/時 | ジェル1個=20–25g想定、20分毎に1つ |
水分 | 400–800ml/時 | 喉の渇き前に少量頻回、気温で増減 |
ナトリウム | 300–600mg/時 | スポドリ+塩タブで分割摂取 |
エイドの滞在時間を短縮する動線
- 左(または右)に寄る側を事前に決める
- カップは半分だけ飲み、残りは頭や首にかけて体温管理
- 固形物は“噛む時間”を勘定、原則は次エイドへ持ち出さない
胃腸トラブル対策
最も多いのは高濃度炭水化物による浸透圧性の不調。ジェルは必ず水とセット。30–35kmの「気持ち悪さ」は糖の不足か過多かの二択なので、直前の摂取量と喉の渇き具合で判断し、必要なら水だけでいったん中和。カフェインは後半に温存すると効果を感じやすいです。
「摂ったつもり」をなくすには、腕にマジックで20分刻みの補給マークを書いておくのが最強のローコスト策。
- 炭水化物・水・ナトリウムの三位一体で設計
- 練習で胃腸耐性を作り、製品を固定
- エイド滞在は最短化、動線を決めておく
装備・シューズ・天候対策と当日動線
装備の最適化は“快適性=パフォーマンス”の直結要素です。シューズの反発硬度、気温と湿度、風、雨、日差し――これらを「摩擦・体温・荷重」の3観点で管理します。当日はスタート前の動き方で余計なエネルギーを使わないこと。以下のチェックリストとタイムラインで迷いを排除しましょう。
持ち物チェック(抜け漏れ防止)
- 計測チップ・ゼッケン・安全ピン、レースベルト
- ジェル5–7個、塩タブ、カフェイン1–2個
- 薄手手袋、帽子 or バイザー、サングラス
- ワセリン or 抗擦れクリーム(脇・股・首)
- ビニールポンチョ(雨・防寒・整列待機用)
- 替えの靴下、タオル、携帯決済
当日の動線タイムライン
時刻目安 | 動作 | ポイント |
---|---|---|
スタート−120分 | 起床・補水・軽食 | 炭水化物+塩、カフェインは様子見 |
−60分 | 会場到着・トイレ | 列が伸びる前に済ませる |
−30分 | ウォームアップ | ドリル5分+流し×3、汗をかかない程度 |
−10分 | 整列・最後の補給 | ジェル1個+水、シューズ紐再確認 |
スタート | 前半は心拍基準 | 会話可レベル、集団活用 |
天候別の装備最適化
高温多湿は汗の蒸散を邪魔し体温が上がります。通気性ウェア+白系キャップ+首元冷却で熱を逃がす。雨天は靴下を撥水素材にし、靴紐はやや緩めて足趾の自由度を確保。風が強い日はバイザーよりキャップ、そして集団走での省エネを最優先に。
装備は“軽さ”より“擦れゼロ”。擦れ一つで集中力は確実に削られる。
- 当日は迷わないように持ち物を前夜に袋分け
- 整列前のジェル1個+水でスタートラインに立つ
- 天候シミュレーションを事前に3パターン用意
エントリー戦略・アクセス・宿泊・FAQ
人気大会はエントリー競争も本番。締切や支払手段、前日受付の有無を早めに押さえ、移動と宿泊を含めた“レースウィーク台本”を作成します。アクセスは複線化(鉄道+タクシーなど)して遅延リスクをヘッジ。宿泊は会場徒歩圏が理想ですが、価格と睡眠の質を秤にかけ、静かな立地>距離の近さを優先するのも一手です。
エントリー〜前日までのToDo
- 大会要項の精読(制限時間・関門・荷物預かり)
- 支払手段の準備(事前チャージ・カード限度枠)
- 宿と交通のキャンセル規定を確認
- 試走または地図読みでコースの“想像試走”
- レース週の食事・睡眠・仕事調整の宣言
移動・宿泊の実用メモ
項目 | 推奨 | 代替 | 注意点 |
---|---|---|---|
交通 | 前日入り・午前移動 | 当日早朝+前泊圏外 | 遅延時のタクシープランを用意 |
宿泊 | 静かな立地・遮光カーテン | 会場近・簡易宿 | 朝食時間と内容を確認(パン+蜂蜜) |
前日食 | 米・うどん中心、塩を添える | ピザ・パスタ | 脂質過多・食物繊維過多を避ける |
よくある質問(FAQ)
- Q:高低差が大きいときのペースは?
A:心拍上限−3〜5bpmで登り、フラット回収。下りはピッチ固定で脚を守る。 - Q:痙攣対策は?
A:ナトリウムと糖の同時摂取、冷却、そしてピッチ維持。前日から塩を意識。 - Q:途中で気持ち悪くなったら?
A:まず水だけで中和し、数分後に糖を少量。歩き混じりでもリズムを切らさない。 - Q:雨の日の靴は?
A:グリップ重視のアウトソール、撥水靴下、靴紐はやや緩めてマメ予防。
レースは「設計図通りに淡々と進めた人」が強い。ドラマはゴール後に起こす。
- エントリー〜移動〜宿泊までを一枚の台本に
- アクセスは複線化して遅延リスクを回避
- 静かな宿×早寝早起きで当日の集中を最大化
まとめ
ゆこっくマラソン攻略は「高低差に応じた配分」「関門逆算の計画」「補給と装備の最適化」の三つで決まります。事前にコース特徴を把握し、前半は抑えて余裕を残し、難所で崩れない設計を徹底しましょう。
- コース図と高低差を前日までに暗記
- 補給・装備は天候別に二案用意