5000m練習メニューガイド|目標タイム別とインターバル早見表チェックで差をつけろ!

5k_workout_interval_guide トレーニング
5000mで結果を出すには、闇雲に追い込むのではなく「目標タイム別のゾーン配分」「週内の置き場所」「回復の質」をセットで設計することが近道です。
本記事は、VO2max(最大酸素摂取量)を磨くインターバルと、乳酸閾値(LT)を押し上げるテンポ系、さらにフォームを支える補助ドリルを、初級〜上級まで段階的に組み替えられるようテンプレ化。7日間の週間プランと8週間のビルドアップ例、つなぎ(レスト/ジョグ)の基準、よくある失敗パターンまで、実戦的に落とし込みます。

  • 目標タイム別:ゾーン早見表と週当たり走行距離の目安
  • VO2系・LT系の配分比と代表メニューの本数/レスト
  • レベル別7日間テンプレと置き換えルール
  • 8週間ビルドアップとテーパリングの手順
  • 疲労管理・ケガ回避のチェックポイント

目標別の基礎設計とペースゾーンの決め方

最初に押さえるべきは「目標タイムから逆算したゾーン設計」と「週当たりのボリューム」です。ゾーンは一般にE(イージー)/M(マラソン)/LT(閾値)/VO2/Rep(短いハード)に分け、Eで土台を作り、LTで巡航速度を引き上げ、VO2/Repで上限を押し上げます。

週3〜6回の頻度で、強度セッションは原則2(LT系とVO2系)+ロングEかMを1、といった骨格に落とすと、疲労と刺激のバランスを取りやすくなります。

目標タイム別の指標と到達ライン

指標はレースペース、10km・3kmの換算、主観的運動強度(RPE)を併用します。例えば18分切りを狙う選手は、3km10:20前後、1kmレペティション3:20〜3:25で余裕度が保てるかをチェック。20分切りではテンポ走(LT)を4:05〜4:15/kmで20分維持できることが合格ラインになります。

週間走行距離と頻度の最適化

週40〜60kmなら強度セッションは2本が基本、70〜90kmで3本も可能ですが、E走の質が落ちないことが条件。練習日は「刺激→回復→刺激」の波形を守り、E走日をサボらずに入れることで、強度日のパフォーマンスが安定します。

ペースゾーン定義(E/M/LT/VO2/Rep)

Eは会話可能、Mはややきつい、LTは「きついが持続可」、VO2は断続的に限界に近い、Repは短く鋭い刺激。心拍計を使うなら、E=最大心拍の65〜75%、LT=85〜90%、VO2=90〜95%あたりを目安に。GPS誤差が大きい日は時間走基準に置き換えて運用しましょう。

疲労管理と回復の設計

主観(眠気・脚の重さ)と客観(安静時心拍・体重変動)を併用。週内で最も重いメニュー後はEジョグ+補強のみ。月1回は回復週を設け、走行距離を20〜30%落とすとケガ率を下げられます。

補強・クロストレーニングの活用

ヒップヒンジ、片脚スクワット、ふくらはぎの低負荷高回数、体幹スタビリティを週2回。疲労時はバイクやエリプティカルで循環を促し、衝撃を抑えます。

目標5000m VDOT目安 レースペース/km
16分台 60± 3:12〜3:19
17分台 56± 3:24〜3:29
18分台 53± 3:36〜3:41
19分台 50± 3:48〜3:53
20分台 47± 4:00〜4:07
  1. 目標タイムからレースペースを決める
  2. 週当たりの頻度と走行距離の上限を決める
  3. LT系1本+VO2系1本+ロングE/M1本を配置
  4. E走でつなぎ、補強は強度日の翌日に集約
  5. 4週に1度の回復週を先にカレンダーへ記入
  • RPE・心拍・ペースの3指標で日替わり管理
  • 暑熱・強風日はタイムよりフォーム優先
  • 睡眠不足日は強度をEに置換しても良い
  • 痛みは24時間ルールで評価、長引けば休む
  • 栄養は炭水化物中心+たんぱく質を十分に

ゾーン設計は最速の近道、そして回復の質が走力を支える。土台が整えば、次章の刺激が着実に積み上がります。

VO2maxインターバルの実戦設計

VO2系は「苦しいけれど崩れない」ギリギリの強度で、総時間は16〜24分を目安に。質を落とす最大の原因は、1本目から飛ばし過ぎることと、つなぎを短くしすぎて失速させることです。セット全体の平均ペースが目標範囲に収まるよう、メトロノームのような均一さを意識します。

1000m×5〜8の進め方と落とし穴

代表的なのが1000m×6(R=200mジョグ90秒前後)。レースペース−10〜15秒/kmが目安。ラスト1〜2本で少し上げる余力を残し、フォームを崩さずに終えることが成功のサインです。

400m×12〜16のつなぎ管理

400mはピッチの維持とランニングエコノミーの改善に有効。つなぎは200mジョグ60〜75秒で整え、一本ごとの心拍回復を観察。上げ過ぎてレストが歩きになるなら本数を減らし、均質性を優先します。

1200〜1600mの上級レペティション

レース後半の耐性を養うなら1200〜1600mのやや長めも有効。3〜5本、R=2〜3分ジョグ。ペースはレースペース−5〜10秒/km程度で、呼吸とリズムの維持に集中します。

セット 目安ペース レスト
1000m×6 RP−10〜15秒/km 200m JOG 90秒
400m×12 RP−15〜20秒/km 200m JOG 60秒
1200m×4 RP−5〜10秒/km 2分 JOG
1600m×3 RP−5秒/km 3分 JOG
変化走(1km交互) RP±0〜10秒/km 連続
  1. 1本目は設定+2〜3秒で入り余裕を作る
  2. 呼吸リズムとピッチの均一化を優先する
  3. 中盤で崩れる前に本数を調整する勇気を持つ
  4. ラスト2本で微増、乱ペースは避ける
  5. 終了後はEジョグ15分+補強で仕上げる
  • つなぎを短縮し過ぎない(質が落ちる)
  • 風向きで区間差が出るコースは往復で均す
  • 心拍計はゾーンの上限を超えないよう監視
  • 炎天下は本数−2、曇天は設定どおり
  • 疲労感が強い日は400mに置換して継続性を確保

均質さは最大の武器。辛さの中でも姿勢と接地は一定に保つことで、VO2刺激が生きた形で定着します。

テンポ走とクルーズインターバルでLTを底上げ

LTは「苦しいが維持できる」領域。ここが上がると、同じVO2の能力でもレース全体の平均速度が底上げされます。20〜30分の連続テンポか、4〜6分のLT区間を複数回繰り返すクルーズインターバルを使い分けましょう。暑熱期は心拍が上振れするため、設定はペースではなくRPEや心拍基準で微調整します。

20〜30分テンポの規準と失敗回避

息は弾むが会話は困難、フォームが崩れないペース。走り終えた直後にもう1kmなら耐えられそう、という感覚が適正。前半から突っ込み過ぎないのが鉄則です。

クルーズインターバルの設定と本数

LT4分×6(R=90秒ジョグ)、LT6分×4(R=2分)など。合計LT時間が20〜30分に収まるよう設計します。心拍がLT上限を超えないよう、区間間のレストで呼吸を整えます。

マラソンペース走の併用と波及効果

Mペース走を40〜60分入れると、酸化系の耐性が向上し、翌週のテンポが楽に感じられます。LT直後に入れず、別日に分けると回復がスムーズです。

タイプ 設定例 狙い
テンポ連続 20〜30分@LT 巡航力の底上げ
クルーズInt LT5分×5 R=90秒 閾値時間の確保
LT変化走 1kmごとLT/MP交互 ペース耐性
M走 40〜60分@MP 有酸素の拡張
終末刺激 LT10分+流し×4 仕上げの鋭さ
  1. 最初の5分は抑え、後半ほど安定させる
  2. 呼吸が乱れたら本数を−1し質を守る
  3. 暑熱日はタイムでなくRPE/心拍で管理
  4. 週あたりLT合計20〜40分を上限にする
  5. 終了後は糖質補給を速やかに行う
  • 脚の張りが強い日はテンポ→Eに置換
  • 周回コースで風の影響を均す
  • 坂を避け、フラットでフォーム優先
  • ピッチは平時−5以内、蹴りすぎ注意
  • 前傾は胸から、腰の抜けを防ぐ

LTの底上げが平均速度を押し上げる。結果としてレースの苦しさが一段階軽くなります。

スピード持久力を橋渡しする補助ドリル

メインのVO2/LTを支えるのが、坂ダッシュや流し、フォームドリルです。短時間で神経系に刺激を入れ、接地の速さと股関節の可動を改善。週2回、Eジョグの最後に数本入れるだけでも、レース終盤のストライド維持に効きます。

坂ダッシュで接地と推進力を強化

4〜6%の緩斜面を選び、60〜80mを6〜10本。上体はわずかに前傾、地面を素早く押し返す意識で。下りは歩きで回収し、完全回復で次へ。

150〜200m流しでストライド最適化

Eジョグ後に150〜200mを4〜6本、8割程度のスピードで。脚が回る感覚と接地の軽さを覚えさせます。フォーム維持が目的で、全力は不要です。

フォームドリルで可動域と安定性を高める

スキップ、ハイニー、バットキック、A/Bドリルなどを各20〜30m×2〜3往復。骨盤の前傾と体幹の安定を意識し、力みを抜きます。

ドリル 本数/距離 ポイント
坂ダッシュ 60〜80m×6〜10 接地を素早く
流し 150〜200m×4〜6 8割でフォーム
Aドリル 20〜30m×2〜3 膝の引き上げ
ハイニー 20〜30m×2〜3 股関節可動
スキップ 20〜30m×2〜3 弾性利用
  1. Eジョグ後に実施し神経系を活性化
  2. 本数は余力を残し翌日の質を担保
  3. 呼吸は鼻口併用でリズム一定
  4. 痛みが出たら即中止しEに切替
  5. 週2回を上限に継続する
  • 上体はリラックス、肩を下げる
  • 接地は真下、蹴り過ぎない
  • 骨盤の前傾を保ち腰を落とさない
  • 足音を小さく、接地時間を短く
  • 腕振りは肘角一定で後方へ

短い刺激で大きな差が出ます。メイン練習の出来をドリルが底上げし、終盤の失速を抑えます。

レベル別・7日間週間プラン例

ここでは初級・中級・上級の三段階テンプレを提示します。仕事や気候に合わせ、同じ系統の中で置き換えるだけで破綻なく回せます。強度日は原則2本、上級は状況により3本まで。疲労の溜まりやすい人は、LTとVO2の間にE+補強日を挟んでください。

初級:まずは習慣化と基礎耐性

週4〜5回。E中心で、LTは短時間から。VO2は400mショートで神経系に軽く刺激を入れる程度に留めます。

中級:LTとVO2の両立

週5〜6回。LT20分やクルーズIntで底上げしつつ、1000m×5〜6で上限も磨きます。

上級:耐乳酸とレースペース調整

週6〜7回。LTとVO2を計画的に重ね、週末はM走または変化走でボリュームを確保。必要に応じて3本目の刺激を追加します。

レベル 主なポイント 週当たり目安距離
初級 E中心+LT短時間 25〜40km
中級 LT20分+1000m×5 40〜70km
上級 LT/VO2+M走 70〜100km
回復週 距離−20〜30%
置換ルール 暑熱=本数−1
  1. 強度日は週2(上級は最大3)に制限
  2. 週末にボリューム、週中に質を配置
  3. 回復週を4週に1度は必ず設定
  4. 痛み発生時は即Eに置換し様子を見る
  5. 忙しい週は本数ではなく質を守る
  • 雨天はトレッドミルで代替可能
  • 朝練は短く、夜にEで補完
  • 移動が多い日は流し×4だけでも可
  • 栄養は練習後30分以内に補給
  • 睡眠7時間を最優先タスクに

テンプレは守るためでなく崩すための基準。状況に応じて系統を保ったまま置換すれば、計画は生き続けます。

8週間ビルドアップとテーパリング

5000mは短距離の鋭さと持久の両輪が必要。8週間の枠で、前半は土台拡張、後半は鋭さのピークを作り、最後の1週間で疲労を抜きます。セット間の関係性を意識し、最重要回の前日はE+流しで神経系の準備を整えます。

8〜5週前:土台拡張と閾値強化

LT合計時間を週20〜30分確保し、VO2は軽め。週末はM走またはEロングでボリュームを確保します。

4〜2週前:鋭さを作る微調整

VO2の比率を増やし、1000m×6や400m×12で上限刺激。LTは維持量に落として疲労の蓄積を避けます。

最終週:疲労抜きと状態合わせ

走行距離を−40〜50%。レース3〜4日前にLT10分+流し、2日前に400m×4(R長め)で軽く刺激を入れて整えます。

期間 フォーカス キー練習例
W8〜W7 LT拡張 LT5分×5、M走50分
W6〜W5 LT+VO2混成 1000m×5、流し×6
W4 VO2強化 1000m×6、400m×12
W3 耐性維持 LT20分、変化走
W2〜W1 テーパリング LT10分、400m×4
  1. 前半はLT時間を積み上げる
  2. 中盤でVO2比率を高める
  3. レース2週前から距離を漸減
  4. 最終週は睡眠と補給を最優先
  5. 刺激は軽く短く、翌日の軽さを基準に
  • ピークの位置をレース−7〜10日に設定
  • 体重の急変は炭水化物と水分の調整で対応
  • 靴は慣れたモデルを本命に
  • ウォームアップは動的ストレッチ中心
  • 当日のルーティンを事前に固定化

ピークは作るもの。削る勇気が仕上がりを決め、軽さと集中が記録更新を引き寄せます。

まとめ

5000mで伸びる計画は、目標タイム別のゾーン設計、LTとVO2の比率管理、週内の置き場所、そして回復の質で構成されます。まずはEとLTで土台を厚くし、VO2を均質に積み上げ、坂・流し・ドリルで神経系の通りを良くする。7日間テンプレは状況に合わせて同系統で置換すれば破綻せず継続できます。

8週間のビルドでは前半で閾値時間を稼ぎ、中盤で上限刺激、最終週で疲労を抜く。どの局面でも「均質なフォーム」「適正なつなぎ」「翌日に残らない仕上がり」を基準に。今日からは、テンプレのうち一つだけでも良いので確実に実行し、1〜2週単位で微調整を。小さな改善の積み重ねが、レース本番の1秒を生みます。