2026年1月2日・3日に開催される「第102回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)」のチームエントリー16名が、2025年12月10日に一斉発表されました。今大会は、大学駅伝界を牽引してきたスーパースターたちが最終学年を迎える「集大成」の年です。
前回覇者の青山学院大学、全日本大学駅伝を制して勢いに乗る駒澤大学、そして出雲駅伝王者の國學院大學。この「3強」による優勝争いは、近年にないハイレベルな激戦が予想されます。各大学の主力メンバーと戦力分析を、専門的な視点で解説します。
| 大学名 | 今季の主な実績 | 注目エース(学年) |
|---|---|---|
| 青山学院大学 | 箱根前回V / 出雲7位 / 全日本3位 | 黒田朝日(4年) |
| 駒澤大学 | 箱根前回2位 / 出雲5位 / 全日本V | 佐藤圭汰(4年) |
| 國學院大學 | 箱根前回3位 / 出雲V / 全日本4位 | 辻原輝(3年) |
箱根駅伝2026(第102回)の展望と3強の構図
第102回大会の最大の焦点は、間違いなく「黄金世代のラストラン」です。1年時から学生長距離界のトップを走り続けてきた選手たちが4年生となり、チームの命運を背負って箱根路に挑みます。
史上稀に見る「3校三つ巴」の戦い
2025年シーズンの学生三大駅伝は、出雲を國學院、全日本を駒澤が制するという群雄割拠の展開となりました。絶対的な本命が不在の中で迎える箱根駅伝ですが、総合力ではやはり駒澤、青学、國學院の3校が頭一つ抜けています。
特に全日本大学駅伝で2年ぶりの優勝を果たした駒澤大学は、佐藤圭汰選手、山川拓馬選手ら強力な4年生世代が健在。前回大会で青学に敗れた悔しさを晴らすべく、万全の仕上がりを見せています。
「山」の攻略が勝敗を分かつ
近年の箱根駅伝において、勝負の決定打となっているのが「山」の区間です。前回大会、青学が優勝を手繰り寄せたのも、山登り・山下りの圧倒的な強さでした。今大会も5区・6区のスペシャリストを擁するチームが、優勝争いの主導権を握るでしょう。
高速化するレース展開への対応
気象条件にもよりますが、今年も往路からハイペースな展開が予想されます。1区から出遅れずに流れに乗り、エース区間の2区で主導権を握れるかが鍵。各校のエントリーメンバーからは、スピードランナーを複数枚揃え、前半から攻める姿勢が見て取れます。
シード権争いも熾烈
優勝争いと同様に熱いのが、10位以内のシード権争いです。早稲田、中央、創価といった実力校に加え、予選会を勝ち上がってきた勢いのあるチームも虎視眈々と上位を狙っています。一つのミスが命取りになる、シビアなサバイバルレースとなるでしょう。
青山学院大学:連覇を狙う「王者」の布陣

前回王者の青山学院大学は、絶対的エースの黒田朝日選手を中心に、盤石の布陣で連覇を狙います。太田蒼生選手ら強力な世代が卒業しましたが、原晋監督の育成力により、新たな戦力が台頭しています。
絶対エース・黒田朝日の最終章
黒田朝日(4年)は、もはや学生長距離界の顔と言える存在です。前回2区での快走は記憶に新しく、今季もトラックシーズンから好調を維持。5000m、10000mともに学生トップクラスの記録を持ち、最後の箱根でも2区出走が濃厚です。
彼がどれだけの貯金を作れるかが、青学の往路優勝、そして総合優勝への最大の生命線となるでしょう。他大学のエースたちとの直接対決は、今大会最大の見どころです。
2年生エース・折田壮太の成長
下級生で注目すべきは、折田壮太(2年)です。1年時から三大駅伝を経験し、着実に力をつけてきました。単独走でもペースを刻める強さは、復路の重要区間や、あるいは往路の主要区間を任せられるレベルに達しています。
先輩たちが築き上げた「青学の強さ」を受け継ぐ次期エースとして、今大会での走りが期待されます。彼の爆発力が、チーム全体の底上げに繋がっています。
「山」の特殊区間への対策
青学の強みである「特殊区間」の層の厚さは健在です。前回好走した経験者が残っていることに加え、新たに山登り・山下りに適性を見出された選手がエントリー入りしています。原監督の采配次第で、5区・6区でライバル校に決定的な差をつける可能性も十分にあります。
駒澤大学:王座奪還へ燃える「最強世代」
全日本大学駅伝を制し、勢いに乗る駒澤大学。藤田敦史監督体制となって3年目、チームの完成度は最高潮に達しています。入学時から「怪物」と呼ばれてきた世代が、ついに最終学年として箱根に挑みます。
佐藤圭汰・山川拓馬・伊藤蒼唯の「3本の矢」
駒澤大の強さは、何と言っても4年生トリオの存在です。
- 佐藤圭汰(4年): スピードとスタミナを兼ね備えた万能型エース。これまでは怪我に泣く場面もありましたが、最終学年は万全の状態。2区または3区での区間新記録更新も視野に入ります。
- 山川拓馬(4年): 主将としてチームを牽引。上り坂への適性が抜群で、5区「山の神」候補の筆頭ですが、平地での走力も向上しており、往路の重要区間への投入も考えられます。
- 伊藤蒼唯(4年): 1年時に6区区間賞を獲得した「山下りのスペシャリスト」。全日本大学駅伝ではエース区間でも好走しており、復路の切り札としてだけでなく、往路起用の可能性もあります。
この3人をどの区間に配置するかが、駒澤の戦略の核となります。
新戦力の台頭と選手層
強力な4年生に加え、下級生の突き上げも激しくなっています。全日本大学駅伝で好走したルーキーや、安定感のある2・3年生がエントリー入り。選手層の厚さという点では、青学に引けを取りません。
特に、中間層の底上げが進んだことで、誰が走っても区間上位で繋げる「穴のない駅伝」が可能になっています。ミスなく襷を繋げば、優勝に最も近い存在と言えるでしょう。
「雪辱」を果たすための戦略
前回大会は2位に甘んじ、悔し涙を流しました。その雪辱を果たすため、チーム全体のスローガンとして「王座奪還」を掲げています。1区から積極的に前に出て、青学にプレッシャーをかけ続ける展開が予想されます。
國學院大學・早稲田大学ほか注目校の戦力

3強の一角を崩す可能性を秘めた大学も、虎視眈々と上位を狙っています。特に出雲駅伝王者の國學院大學と、伝統校の早稲田大学は、エース級の選手が揃っており、展開次第では優勝争いに割って入る力を持っています。
國學院大學:出雲王者の総合力
出雲駅伝で優勝し、そのスピード能力の高さを証明した國學院大學。平林清澄選手ら強力な世代が卒業しましたが、新エースの辻原輝(3年)を中心に、チーム力は落ちていません。
「・あきらめない走り」を信条とする國學院は、粘り強さが持ち味。往路で3強に食らいつき、復路で粘り勝つ展開になれば、箱根初優勝の悲願達成も見えてきます。5区・6区の山対策も入念に進めているとの情報があり、不気味な存在です。
早稲田大学:往路優勝を狙える布陣
早稲田大学は、主将の山口智規(4年)と、5区で圧倒的な強さを見せる工藤慎作(3年)という2枚看板が強力です。山口選手は学生トップクラスのスピードを持ち、2区での好走が確実視されています。
工藤選手は前回大会でも5区で快走しており、彼に襷が渡る位置次第では、往路優勝をさらう可能性も十分にあります。課題とされる復路の選手層をどれだけカバーできるかが、総合上位への鍵となるでしょう。
中央大学:シード権死守と上位進出へ
前回は体調不良者続出のアクシデントに泣いた中央大学ですが、地力は間違いなく上位クラスです。吉居駿恭選手(4年)らスピードランナーが揃っており、万全の状態で臨めれば、3強を脅かす存在になり得ます。
まとめ:第102回箱根駅伝の見どころ
2026年の箱根駅伝は、各大学のエースたちが最高の仕上がりを見せており、記録にも記憶にも残る大会になることは間違いありません。エントリーメンバーを見る限り、どの大学も「攻め」の姿勢を崩しておらず、1区からの高速レースが期待されます。
観戦のポイントまとめ:
- 佐藤圭汰 vs 黒田朝日: 学生長距離界を牽引してきた両雄の最終決戦。
- 5区山登りの攻防: 駒澤・山川、早稲田・工藤ら「山の神」候補たちの激走。
- シード権争いの行方: 10位以内のボーダーライン上での熾烈な争い。
号砲は1月2日朝8時。選手たちが襷に込めた4年間の想いと、各大学のプライドがぶつかり合う熱い戦いを、ぜひその目で見届けてください。


